あとがきと謎解き 幻の3番線
最後まで読んで下さり、ありがとうごどいます。
この「幻の3番線」は、ご覧の通りの学園モノで、恋愛モノで、なをかつ「告白」っていうのがメイン・テーマになっていたりします。
でも、ゲームの世界の、絵に描いた様な結末にはなっていません。
今回は、言えなかった言葉・伝えられなかった想いという片想いの、切なさと諦めにも似た空虚感を、純情な主人公という設定で描いてみたかったのですが、見事に「ストーカーと紙一重」になってしまいました。
ストーカーなんて言葉が出来てから、「物陰から見つめるだけが精いっぱいの、片想いの純情な恋」は社会から抹殺されてしまったのでしょうか?改めて言葉の持つ力と、その言葉によって生み出される危険を危惧してしまいます。
それはさておき、この物語の時代は、ストーカーなんて言葉の無かった1980年代です。ちょうど神戸市の地下鉄が新長田から三ノ宮まで延長された翌年です。
神戸電鉄の湊川駅、この駅で主人公は、普段使った事の無い階段を降りていくと、2番線までしかない筈のホームに、ある筈の無い3番線が存在し、そこから不思議な雰囲気の少女が電車に乗って帰って行く。そしてその先にある、六甲の山の中にポツンと存在する、木霊や精霊達の為の駅。
これらがひとつに繋がると、現実を超越したトワイライトな世界が見えてきたりします。

では、そろそろ謎解きを始めましょう。
まず、神戸電鉄の湊川駅の3番線ですが、これは現実に存在します。この駅のホームは、上り線と下り線のふたつの線路に挟まれた所に、島式のホームが1面あるだけなのですが、上り線が1番線はいいとして、実は下り線の南側半分が2番線で、北側半分が3番線になっているのでした。
下り方面の、この先にある鈴蘭台駅で線路は、三木・粟生方面と、三田・有馬温泉方面に別れており、三木・粟生方面に行く電車は、ホームの南半分で止まり、三田・有馬温泉方面に行く電車が、ホームの北半分に止まります。
そういった関係からか、下り線を半分に分けて2番線・3番線としている様です。図にすると、こんな感じになります。
さて次に主人公が感じた違和感、いつも利用している駅の、3番線へと繋がっている階段ですが、主人公が帰るのは西鈴蘭台駅で、鈴蘭台駅で三木・粟生方面へ分岐して、2つ目の駅です。
当然湊川駅では2番線の位置に電車は止まります。3番線へ続いている階段を降りて電車を待っていると、電車は自分の所まで来ずに、かなり手前で停車してしまい、慌てて電車の開いたドアへと駆け込む事になります。
この駅を利用しはじめて間も無い頃の主人公は、そんな事も判らずに、この階段を使った事もあるのでしょうが、日が経つにつれ、2番線への階段を使うようになり、無意識に2番線への階段へ身体が行くようになってくると、3番線への階段は意識の外の物になっていたのでしょう。ただでさえ、いつもの行動・いつもの場所が好きな主人公ですから。
この湊川駅の2番線・3番線のシステムは、最近(ホームの駅名の看板が青色に変わってから)は判るように階段の降り場に表示されていますが、当時はそんな表示は無かった様に思います。また、当時は地下鉄湊川公園駅への乗り換えは、かなり長いと思われるコンコースを歩いていましたが、今では新たな通路が出来て、乗り換えが楽になっています。
六甲の山中に、突然現れる菊水山駅。辺りに民家はおろか、まともな道も無い山の中の無人駅ですが、この駅は山の斜面に造られており、電車の窓から見えない所の、斜面を降りていった場所に、一応車の入って来れる舗装道路があります。
そして、その道路沿いに何軒かの民家があり、近くに浄水場なんていう施設もあります。けっして六甲の木霊やもののけの為に造られた駅ではありませんが、電車の窓から見ると、六甲山の山の中に続く登山道らしきものしか見えないので、YOHの死んだ祖母さんも冗談で、人間に化けた狐や狸が街へ降りていくための駅みたいな事を言っていた記憶があります。また、六甲山系を舞台にした妖精モノの小説も多くありますので、六甲の自然は妖精の存在を信じても良いような気分にさせる何かがあるのでしょう。
参考までに第2話は、この菊水山駅が舞台になる予定です。
だいたい、これが今回の謎解きです。知ってしまえば、どうって事ないことも、無知と思い込みで超常現象の出来上がりということです。みなさん、観察する眼と、科学する心を育てましょうね!