寅次郎。
寅次郎は、去年の6月9日に我が家に来た仔猫だ。あれから、ちょうど1年になる。エリ坊が退屈な毎日を送っていたので、姉妹を貰おうと言う事になった。ペットショップの猫ではなく、可哀想な境遇の猫を貰ってあげたいのだという。母ちゃんがネットで里親サイトを探してきた。猫に『里親』という言葉を使い、活発に運営されている
サイトがあるのに驚いた。そして、ある募集記事に目が留まった。5兄弟の可愛い仔猫たちだった。女の子を捜していたが、保護先のボランティアの方のお宅に伺い、目から鱗が落ちる思いがした。
川崎市のお宅までお見合いに伺い、実際に仔猫たちに合うと、みんな愛くるしく、どの子でも良くなった。いちばん人懐こく、いつまでも膝の上に居た、オスの寅次郎に決めることにして、猫の活動について、色々と話をお聞きした。エサやり、捕獲〜避妊・去勢手術、その費用の調達、苦情・トラブルの対処、保護猫の里親募集、お見合い〜お届け、ワクチン接種、完全室内飼い、地域猫など、現在の自分たちのお手本になることばかりだった。お宅には、募集記事の仔猫たちのほかに、保護したばかりでこれから里親募集をする仔猫や、保護して迎えてもらった面倒見の良い先住猫が居たり、捕獲してケージで手術を待つ触れない猫などが居て、ご苦労が偲ばれた。しかし、その時点では、興味を持ったものの、感心するばかりで、まさか自分たちが、そんな活動をするとは想像もつかなかった。帰り際に、猫の活動についての小冊子とチラシを戴いて、お宅を、お邪魔した。このチラシが後々のきっかけになろうとは...。
寅次郎が来るまでの間が、とても待ち遠しく、何度もボランティアの方に、アドバイスを受けるため電話をしてしまった。先住猫のエリ坊のこと、フードや猫砂のこと、などだったと思う。そして猫グッズの買物も楽しかった。トイレや猫砂、仔猫用フードや皿を揃えた。里親サイトの募集記事を見返しては、指折りお届けの日を待っていた。今ではこちらが、お届けするのだが、その時のことを思い出して、里親さんのお宅へ猫をお届けしている。

そして、ついに寅次郎がやって来た。いきなり エリ坊と険悪なムードだったが、今にして思えばよくある事だったのかもしれない。
2匹とも馴染めないまま1週間が過ぎ、次の1週間は修羅場だった。エリ坊の目つきが変わり、うつろになって来た。瞬膜突出という交感神経の異常時に起きる症状も出てきた。もっと心配だったのが、うちの母ちゃんだった。
エリ坊との絆が深かったので、新しく猫を入れた責任を感じてノイローゼとまではいかなくとも、かなりの重症だった。自分は寅次郎と一緒に寝て、母ちゃんはエリ坊と寝ていた
(この頃から寝床が別々になったのだが、家庭内別居だとは思いたくない)。そして、決定的な事件が起きた。
寅次郎がトイレに入るたび、エリ坊が出口で待ち伏せして、攻撃するようになった。その攻撃がエスカレートしていったある日、寅次郎がウンチを粗相したのだ。2日間くらい溜まった量で、少し下痢気味だった。それもエリ坊と母ちゃんが寝ているベットの掛け布団の上でだ。これにはすっかり、ノックアウト寸前だった。保護主のボランティアの方に、電話で問い合わせたが、トイレ以外で粗相するのは考えられないという。それでも、こちらを気遣って下さり、エリ坊と寅次郎の双方のためにならないのならば、寅次郎を戻してもらってもいいと言って戴いた。だんだん2匹の距離も縮まって来ていただけに残念だったが、迷った結果、お戻しすることになった。自分たちの未熟さを痛感した。
翌朝、今度は、自分と寅次郎が寝ているマットの上で、オシッコを粗相した。自分のパジャマを猫砂に見立てて、掻いていたのだ。その後、ジワーッと温かくなったと思ったら、また、パジャマを掻いている。これには、すっかりヘコんだが、ハッとして気がつき、おととい替えた、おからの猫砂を捨て、ベントナイト系の砂に替え、パジャマのオシッコを砂の上にしぼった。すぐ脇で見ていた寅次郎は、トイレにすぐ入り、匂いを嗅ぎ、気持ち良さそうに目をつぶって用を足した。すまない、寅次郎。どんなにトイレに行きたかったことだろう。どんなつらい思いで掛け布団にウンチをしたんだろう。そして一生懸命に布団を掻いて、匂いを消したのだろう。賢く、きれい好きの寅次郎が、不本意な状況に、無知な飼い主のせいで追いやられてしまったのだ。
そして、お戻しの日が来た。寅次郎のトイレや皿を片付けていると、涙がボロボロ出た。ボロボロ、ボロボロ出た。最低だ。自分たちを罵った。すまない、寅次郎。こんな飼い主ですまないと、何度も詫びた。
その後、寅次郎は名前を 『小太郎』に改め、優しい里親さんに迎えてもらったとお聞きした。環境を何度も変えられ、つらい思いをさせてしまった。そんな痛烈な反省と懺悔の気持ちが、今の自分たちの活動の原点の一つだと思っている。今でも、川崎市のボランティアさんには、よく相談させて戴いている。まさか、自分たちが猫の活動をするとは信じられなかったようだ。その通りだと思う。自分たちでも信じられないのだから。
猫の活動を始めるきっかけと、黒猫のクーの里親募集再開の理由は、次回の更新にて。